ring ring ring
 突然の宣言に、わたしの頭の中はパニック状態で、とにかく何としてでも許してもらわなければと必死になった。
 「そんなあ……。わたしすっごい反省したんだよ。マリッジブルーなんて都合のいい言い訳で、忠信さんの気持ちも考えずにあんなことしてしまったこと、ほんとに悪かったって思ってる。それに、結婚に対する決意も甘くて、こんなことじゃいけないって心を入れ替えたばかりなのに」
 「おれだって何度も気持ちを切り替えようとしたんだ。だけど無理だった」
 「何度もって、どのくらい?いつから?そんな結論出すの、まだ早いよ」
 わたしはだんだん涙声になって、感情にまかせて忠信さんの胸に掴みかかっていた。忠信さんはそれを冷静に受け止めていた。
 「毎日毎日考えた結論だよ。美波の顔を見たら気持ちが変わるかもしれないとも思ったけど、やっぱりそううまくはいかなかった」
 「そんなのずるい!ふたりのことなのに、何の相談もなしにひとりで決めちゃうなんて、ひどいよ。別れたくない」
 「美波」
 「ちゃんと話し合おう。ちょっとしたすれ違いで婚約破棄なんてダメだよ。お互いの家族だってびっくりするよ。このままじゃわたし、親に何て言えばいいかわかんないよ」
 「その“親”にも相談して決めた。おれの親にね」
 その言葉に、わたしは絶句した。
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