トナカイ×トナカイ~いちごのケーキ~
「そのうちわかる。兄ちゃんの家に着いたぜ。」

ほんとうだ。いつのまにか、自分の家が目の前だった。

家の近所なら見慣れた街並みもあったろうに、

どういうルートを辿ってきたのか、全然わからない。

「じゃあな。」

「ま、待ってよ!」

あっさり立ち去ろうとするトナカイに、焦って声をかけた。

「ん? なんだ?」

ぴたっと止まってぐりんと振り返られ、

特に言うこともなく、

ただ引き留めたかっただけなので、戸惑った。

「ええと……」

なにかないか。

なにか言わなくちゃ。

トナカイが帰ってしまう。

もっとましな運転をしろだとか、

防寒具を用意しろだとか、

ありがとうだとか、

なにか言わなくちゃ。
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