偽装結婚の行方
「…………えっ?」

「“堕した”って言ったのは、嘘だったの」

「…………はあ?」

「あなたに嘘ついて、その後私は姿を隠してこの子を産んだの。もちろん一人で育てるつもりで。でも父や母に隠し切れなくて、とうとうあなたの名前を……。ごめんなさい!」


な、なんと、この赤ん坊の父親が俺ってか?

じゃあ“似てる”って、赤ん坊が俺に似てるって事か?

そんなバカな!


「ちょ、ちょっと待ってください。急にそんな事言われても……」

「涼!」


突然隣の親父さんに怒鳴られた。


「見苦しいぞ。自分の子どもを降ろせだなんて、よく言えたものだ。おまえも男なら、潔く責任を果たしなさい!」

「親父さん……?」


俺は情けない声を出して親父さんを見たが、親父さんは厳しい顔付きで俺を睨むばかりだ。そして、


「尚美さん、さぞや独りで心細かったでしょ? こんなバカ息子で、本当にごめんなさい」


片やお袋さんは、そう言って河内尚美さんに頭を下げた。尚美さんは、「そんな……」とか言って、恐縮していたが。


おおよその筋書きは読めたが、思うに俺の役って……思いっきり悪役か?

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