偽装結婚の行方
最終章 秘策・嘘も方便
なんと渡辺部長は、テーブルに額が着くぐらいに深く頭を下げた。いや、実際に着いているかもしれない。部長という立派な肩書きの人が、俺みたいな10歳以上も年下の若造に頭を下げたのだ。なかなか出来る事ではないと思う。
それ程、娘である希ちゃんの事を思っているわけで、俺は驚くと同時に感動を覚えた。
「渡辺さん。わかりましたから、どうか顔を上げてください」
「君を信じていいんだね?」
「はい、もちろんです。実はですね、その事も含め、俺にはある秘策があるんです」
実はそうなのだ。もちろん誰にも言っていないが、前々から俺はある事を考えていたんだ。もし尚美と本当の結婚が出来たなら、そうしようと……
「秘策?」
「はい。今の段階ではまだ申し上げられませんが、近々その事でご相談に伺うと思います」
「私にかい?」
「はい」
その相談とは、渡辺部長にとっては残酷な事かもしれない。だが、何としても聞き入れてほしいと思っている。希ちゃんのために……
「ところで渡辺さん。こんな事を言うのは失礼かと思うんですが……」
「何かな?」
「えっと、これからどうされますか? その、奥様とは……」
それを俺なんかが聞いたところでどうにもならないのだが、どうしても気になるので聞いてみた。
「ああ、その事か。昨夜じっくり考えたんだが、妻とは……」
そこで渡辺さんは言葉を切った。やはり奥さんとは別れるのだろうか。と思ったのだが、
「やり直そうと思う」
違った。予想外だし、渡辺さんの表情は晴れ晴れとしていた。
「そ、そうですか」
「妻は我が侭で気位が高く、そういった嫌な面ばかり見ていたが、よくよく考えたら可愛いところもあってね。何より私を好いてくれてるようなんだ。だから、これからは彼女のいい所も見てやろうと思ってる」
そうなんだあ。うん、それがいいと思う。渡辺さんは照れ臭そうな顔をし、俺は何度も頷いていた。
「それよりも君、すぐにあの子に連絡しなさい」
急に渡辺さんは、血相を変えてそう言った。
それ程、娘である希ちゃんの事を思っているわけで、俺は驚くと同時に感動を覚えた。
「渡辺さん。わかりましたから、どうか顔を上げてください」
「君を信じていいんだね?」
「はい、もちろんです。実はですね、その事も含め、俺にはある秘策があるんです」
実はそうなのだ。もちろん誰にも言っていないが、前々から俺はある事を考えていたんだ。もし尚美と本当の結婚が出来たなら、そうしようと……
「秘策?」
「はい。今の段階ではまだ申し上げられませんが、近々その事でご相談に伺うと思います」
「私にかい?」
「はい」
その相談とは、渡辺部長にとっては残酷な事かもしれない。だが、何としても聞き入れてほしいと思っている。希ちゃんのために……
「ところで渡辺さん。こんな事を言うのは失礼かと思うんですが……」
「何かな?」
「えっと、これからどうされますか? その、奥様とは……」
それを俺なんかが聞いたところでどうにもならないのだが、どうしても気になるので聞いてみた。
「ああ、その事か。昨夜じっくり考えたんだが、妻とは……」
そこで渡辺さんは言葉を切った。やはり奥さんとは別れるのだろうか。と思ったのだが、
「やり直そうと思う」
違った。予想外だし、渡辺さんの表情は晴れ晴れとしていた。
「そ、そうですか」
「妻は我が侭で気位が高く、そういった嫌な面ばかり見ていたが、よくよく考えたら可愛いところもあってね。何より私を好いてくれてるようなんだ。だから、これからは彼女のいい所も見てやろうと思ってる」
そうなんだあ。うん、それがいいと思う。渡辺さんは照れ臭そうな顔をし、俺は何度も頷いていた。
「それよりも君、すぐにあの子に連絡しなさい」
急に渡辺さんは、血相を変えてそう言った。