偽装結婚の行方
「今後の事なんですが……」


尚美さんの父親が重々しい感じで口を開いた。そして、


「尚美が言うには、子どもは自分一人で育て、息子さんには認知だけしてもらえばいい、との事なんですが……」


と言って親父さんを見、次に俺に向かって探るような視線を送って来た。


認知?

ああ、確か子どもの戸籍に父親の名前を載せる事だよな。と言っても、まさか本当に俺の名前を載せるわけはないだろうから、尚美さんは取り敢えずそれで一時的に凌ごうという考えなんだろうな。


「涼、おまえはどう思う?」


ぼーっとしていたら、親父さんからそう聞かれた。


「なかなか上手い考えだと思うよ?」


半ば反射的に、思ってた事をそのまま言ったのだが、


「バカもん!」


またもや親父さんから怒鳴られ、お袋さんからは「情けない子ね……」とボヤかれてしまった。


「おまえという奴は……。なぜ“結婚します”と言えないんだ?」

「け、結婚!?」


想像もしてなかった“結婚”という言葉に、思わず俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。

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