偽装結婚の行方
「そ、そんな事は……」
すかさず尚美さんも親父さんに向かって顔を激しく横に振った。ま、当然ではあるけども。すると親父さんは、
「こんな息子なんで、愛想を尽かしましたか?」
と言った。
情けない言われようだが、今の俺は悪役だから仕方ないと思う。それが事実なら、つまり尚美さんを妊娠させ、『堕ろせ』と言い、長らく尚美さんを放ったらかしだったとしたら、どんな言われ方をされてもしょうがないと思う。俺だって、そんな男は同性として許せないもんなあ。
しかし尚美さんは、
「そんな事はありません。私は今でも涼の事を……」
と言って恥ずかしそうに顔を赤くした。
それは演技のはずなのにそうは見えず、まるで告白されたようで俺まで顔が熱くなってしまった。そして正直なところ、嬉しい気持ちがした。
だが、流れ的には『はい、愛想が尽きました』と言ってもらった方が良かったと思う。なぜなら……
「そうですか。では、息子と結婚してください」
となるわけで、
「いかがでしょうか?」
と親父さんが尚美さんの父親に問えば、
「こちらに異存はありません。なあ?」
となり、尚美さんの母親も「はい」と同意し、俺の横でお袋さんも強く頷いている。
つまり、当人同士を除いた互いの両親の間では、俺達を結婚させるという事で、一瞬にして意見がまとまってしまったのである。
「そ、そんなあ……」
尚美さんはすっかり慌ててしまい、おそらくは自分の発言を後悔しただろうけど、もう手遅れだと思う。
俺はと言うと、不思議と尚美さん程には慌ててなくて、むしろ冷静だ。まだ現実の事として実感出来てない、だけかもしれないけれど。
すかさず尚美さんも親父さんに向かって顔を激しく横に振った。ま、当然ではあるけども。すると親父さんは、
「こんな息子なんで、愛想を尽かしましたか?」
と言った。
情けない言われようだが、今の俺は悪役だから仕方ないと思う。それが事実なら、つまり尚美さんを妊娠させ、『堕ろせ』と言い、長らく尚美さんを放ったらかしだったとしたら、どんな言われ方をされてもしょうがないと思う。俺だって、そんな男は同性として許せないもんなあ。
しかし尚美さんは、
「そんな事はありません。私は今でも涼の事を……」
と言って恥ずかしそうに顔を赤くした。
それは演技のはずなのにそうは見えず、まるで告白されたようで俺まで顔が熱くなってしまった。そして正直なところ、嬉しい気持ちがした。
だが、流れ的には『はい、愛想が尽きました』と言ってもらった方が良かったと思う。なぜなら……
「そうですか。では、息子と結婚してください」
となるわけで、
「いかがでしょうか?」
と親父さんが尚美さんの父親に問えば、
「こちらに異存はありません。なあ?」
となり、尚美さんの母親も「はい」と同意し、俺の横でお袋さんも強く頷いている。
つまり、当人同士を除いた互いの両親の間では、俺達を結婚させるという事で、一瞬にして意見がまとまってしまったのである。
「そ、そんなあ……」
尚美さんはすっかり慌ててしまい、おそらくは自分の発言を後悔しただろうけど、もう手遅れだと思う。
俺はと言うと、不思議と尚美さん程には慌ててなくて、むしろ冷静だ。まだ現実の事として実感出来てない、だけかもしれないけれど。