偽装結婚の行方
日曜日。休日にしては早起きした俺は、朝飯を食べた後、荷造りを始めた。と言ってもあまり持って行く物は無く、大物はベッドと布団ぐらいだ。

他にはすぐに必要な身の回りの物と衣類を運び、足りなかった物はその都度取りに帰ればいい、という考えだ。

遠くない将来、また戻って来るはずだからそうするのだが、それを知る由もないお袋さんは、「いい加減なんだから……」と呆れていた。


布団を畳み、折りたたみ式のベッドを畳んだところでほぼ終了。後は尚美達が来るのを待つばかりだ。

今日は朝から天気が良く、引越し日和と言ったところか。風は冷たいかもだが、日当たりのいい場所にいるとポカポカして、眠くなるほどだ。


下に降りてリビングでテレビをボーッと観ていたら、玄関でチャイムが鳴った。続いてお袋さんのトーン高めの声が聞こえて来たから、尚美達が来たのだと思う。


俺もおもむろに立ち上がって玄関へ行くと、やはり尚美が来ていて、彼女の後ろに茶髪の若い男が立っていた。尚美の弟さんだろう。


「おはようございます」

「やあ、おはよう」


俺と尚美は軽く挨拶を交わしたが、弟さんは無言で俺を睨んでいた。

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