偽装結婚の行方
「あの、弟の伸一です」


尚美が弟さんを紹介してくれたから、


「はじめまして。中山涼です。今日はお世話になります」


と俺も自己紹介をしたのだが、伸一君は『フン!』って感じで無言。予想通りだが。


「伸一……!」


尚美は彼をたしなめようとしたが、


「希ちゃんは?」


と、俺は話題を逸らす意味でも聞いてみた。尚美も、もちろん伸一君も希ちゃんを抱いておらず、ではどこにいるのかなと思ったし。


「実家に預けてきました」

だそうで、

「ああ、なるほどね」

と俺は納得して軽く返したが、


「あら、そうなの? 何なら私が子守りしても良かったのに……」


と、お袋さんがさも残念そうに言った。お袋さんは、たぶん希ちゃんに会いたかったんだと思う。今日はそれを期待してたのだろう。自分の孫だと思ってるから。

もしそうじゃないと知ったら、さぞやガッカリするだろうなあ……

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