偽装結婚の行方
『引越しだよ』


答えになってるような、なってないような……。しかし核心をついた返事を俺は送った。


『あんたが?』

『そう』

『そんな話、聞いてない!』

『急に決まったんでね』

『なんで?』

『込み入った事情。今度会った時に話すよ』

『わかった』


という感じで真琴とのやり取りは終わった。真琴に言った通り、落ち着いたら彼女にだけは正直に事情を話すつもりだ。俺としては誰かに本当の事を話したい気持ちがあり、その相手は真琴以外に思い当たる人はいない。


その時、真琴はどんな反応をするだろうか。呆れるかもしれないが、やむを得なかった事を理解してくれるだろうか。うん。俺の事をよく知る彼女なら、きっと解ってくれるだろう……


一時間程して俺達を乗せたトラックは尚美のアパートに着いた。初めて見るそれは、比較的新しめな二階建ての洒落たアパートだった。

< 46 / 122 >

この作品をシェア

pagetop