偽装結婚の行方
「なんだよ、打ち合わせか？」


戻った俺達に、阿部は皮肉っぽく言った。


「ああ、そうさ。おまえにどこまで話すか話し合ったんだ」

「で？」

「全部話すよ。ただし、会社の人には内緒にしてもらいたい。いいか？」

「ああ、いいよ」

「よし。えっと……」


どこから話そうかと悩んでいたら、希ちゃんがピンクのウサギのぬいぐるみを床に落としてしまった。俺は手を伸ばしてそれをひょいと拾って埃を払い、彼女のもみじのような小さな手に持たせてあげた。すると希ちゃんは、それはそれは可愛らしい顔でニッコリ笑ってくれた。

よし、ずばり現状から話すとしよう。阿部にとってはかなり衝撃的な現状を……


「俺と尚美は……結婚している」

「えっ？ う、嘘だろ？」


案の定、阿部は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


「嘘だが本当だ」

「おい、ややっこしい言い方すんな。嘘か本当か、どっちなんだよ？」

「まあ、慌てずに俺の話を聞いてくれ。事の始まりは先々週の日曜日、俺はダチの家にいるところを親父さんから呼び戻された。その後、尚美から奇妙なメールを受け取ったんだ。その内容は……」


先々週の日曜日の、尚美達親子に対面し、あっという間に俺達の結婚が決まった経緯を俺は有りのまま阿部に話した。その部分に嘘は微塵も無いから、すんなりスムーズに話す事が出来た。

阿部は、食い入るような目で俺と尚美を交互に見ながら、俺の話に耳を傾けていたが……

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