偽装結婚の行方
何かのはずみで接近した時、思わず手が出そうになるし、朝晩の出迎えの時は顔を寄せてチューしたくなるし、何と言ってもあの時の尚美がヤバイ。そう、湯上りだ。

髪はシットリと濡れ、頬の辺りがほんのり薄ピンク色に染まったスッピンでも可愛い顔。そして、温もりと共に漂うボディソープの香と、Tシャツを持ち上げるように見える二つの胸の膨らみ……


そんな夜は、悶々としたまま無理やり寝るのだが、まるで拷問のようで辛い。

尚美が気になるのは前からだが、こんなにも彼女に触れたい、と思うようになったのは阿部から余計な事を言われてからだ。阿部の奴……


「涼」

「ん?」

「希は寝たから、私はお風呂入るね?」

「お、おお」


風呂かあ……

俺は湯上りの尚美を見るのが楽しみであり、一方で恐怖でもあった。その二つを自分なりに比較してみると、今夜は後者が勝るようだ。

つまり、湯上りのすこぶる色っぽい尚美を見て、俺の自制心は保てるのかどうか。はっきり言って、自信ない。


ではどうしようかと考え、寝ちまう事にした。まだ寝るには早過ぎる時刻だが、頑張れば眠れなくもない気がする。悶々として眠れぬ長い夜を過ごすよりずっといい。


という事で、尚美が風呂に入ってる内に俺は布団に横になった。やはりすぐには眠れなかったが、それでも次第にうつらうつらしてきた。と、その時……

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