偽装結婚の行方
「今日はお互いどうかしてたと思う。何も無かった、って事にしないか?」


俺は少し考えてからそう言ってみた。過ぎた事は今更どうしようもないが、今後は繰り返してはいけないと思う。この過ちを……


「あなたがそうしたいなら構わないけど、後悔してるの?」

「ああ。すごく後悔してる」

「そうなんだ……」


その言い方から、尚美はそうでもないように聞こえた。


「君は後悔してないのかい?」

「私は……あまりしてない」

「どうして? 悪いと思わないのかい? その……“彼”に」

「思わない。だって、あの人だって奥さんとしてるもの」


ああ、確かにそうだよなあ。しかしなあ……


「だから許されると思う。少しぐらい浮気しても」


尚美は、少し怒ったような顔でキッパリとそう言い切った。尚美が怒った顔は初めて見たが、そんな顔もかなり可愛い……なんて感心してる場合じゃないな。


浮気か……

尚美にとって、俺は単なる浮気相手に過ぎないわけか。偽装とは言え、結婚してるっていうのに。

そして俺はと言えば……本気なんだよなあ、間違いなく。もちろん口には出せないが。


なんか、すっげえ不公平な気がするなあ……

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