偽装結婚の行方
第八章 突然の終わり
その後の俺達は、“過ちを繰り返さない”どころか、何度も繰り返してしまった。というより、むしろ今ではそうする事が普通になっている。

夜、希ちゃんを寝かしつけた後、俺達は特にどちらかが誘うでもなく、当たり前のようにベッドを共にしている。ただ、終わった後に感じる罪悪感や焦燥感は毎回消える事はない。尚美からは、そういった感情の“揺れ”は感じられないけれども。


1ヶ月も経てば、希ちゃんの扱いにもだいぶ慣れてきた。オムツの交換はお手の物だし、風呂に入れて洗ってやるのはすっかり俺の担当になっている。簡単な物なら離乳食だって作れるし、もちろん食べさせる事も出来る。

二人を連れて車で実家に帰った時、『すっかり“パパぶり”が板に着いたわね』とお袋さんから言われたりもした。


散歩や買い物に出掛けた時など、近所の親子連れなんかと顔見知りになったりもして、我ながらしっかり“パパぶり”を演じているなと、感心してしまう。


そんな生活は嫌でなく、むしろ楽しい。それだけに、いつか終わりが来ると思うと悲しい。それがいつなのか、尚美は何も言わないし、俺から聞いた事もない。催促してるように尚美に思わせたくないし、実際にそんな気は毛頭ないからだ。

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