偽装結婚の行方
そして週末。
俺は尚美達を車で尚美の実家に送り届けると、すぐにUターンして駐車場に車を止め、今度は徒歩で駅へ向かった。真琴を迎えに行くためだ。慌しいが仕方ない。
年末が近く、街を行き交う人がいつもより多く、その足取りが早く感じるのは気のせいじゃないと思う。そういう俺の足取りもそうなのだが。
改札の手前に着いたのは、ほぼ真琴と待ち合わせた時間通りだった。そして、すぐに茶色いコートを着た真琴がやって来た。相変わらず髪は短く、男と間違えられそうな風貌だ。
「やあ、久しぶり」
と挨拶もそこそこに、俺達はアパートに向かって歩き出した。
「駅から近いの?」
「ああ。歩きで10分くらいだ」
「そう? ところでさ、楽しかった?」
不意に真琴が前を向いたままそう聞いてきたが、何の事だろう。何が楽しかったって言うんだ?
もしかして……尚美とのセックスか!?
真っ先に思ったのはソレだが、そんなわけねえよな。
「何が?」
「クリスマス」
「ああ……。まあな」
そう言えば何日か前はクリスマスだった。俺は会社の帰りに小さなケーキとシャンパンを買い、尚美はいつもより少し豪華な晩飯を作ってたっけ。そして二人で「メリークリスマス」なんて言い合ったような、言わなかったような……
それ以外は特に変わった事はしなかったが、多少、クリスマス気分は味わったと思う。
「おまえは?」
「別に。いつもと同じ夜だった」
「あっ……ごめん」
俺はようやくある事に気づき、思わず謝っていた。というのは、クリスマスイブの夜は、いつも真琴のアパートに行ってたんだ。去年までの俺は……
俺は尚美達を車で尚美の実家に送り届けると、すぐにUターンして駐車場に車を止め、今度は徒歩で駅へ向かった。真琴を迎えに行くためだ。慌しいが仕方ない。
年末が近く、街を行き交う人がいつもより多く、その足取りが早く感じるのは気のせいじゃないと思う。そういう俺の足取りもそうなのだが。
改札の手前に着いたのは、ほぼ真琴と待ち合わせた時間通りだった。そして、すぐに茶色いコートを着た真琴がやって来た。相変わらず髪は短く、男と間違えられそうな風貌だ。
「やあ、久しぶり」
と挨拶もそこそこに、俺達はアパートに向かって歩き出した。
「駅から近いの?」
「ああ。歩きで10分くらいだ」
「そう? ところでさ、楽しかった?」
不意に真琴が前を向いたままそう聞いてきたが、何の事だろう。何が楽しかったって言うんだ?
もしかして……尚美とのセックスか!?
真っ先に思ったのはソレだが、そんなわけねえよな。
「何が?」
「クリスマス」
「ああ……。まあな」
そう言えば何日か前はクリスマスだった。俺は会社の帰りに小さなケーキとシャンパンを買い、尚美はいつもより少し豪華な晩飯を作ってたっけ。そして二人で「メリークリスマス」なんて言い合ったような、言わなかったような……
それ以外は特に変わった事はしなかったが、多少、クリスマス気分は味わったと思う。
「おまえは?」
「別に。いつもと同じ夜だった」
「あっ……ごめん」
俺はようやくある事に気づき、思わず謝っていた。というのは、クリスマスイブの夜は、いつも真琴のアパートに行ってたんだ。去年までの俺は……