偽装結婚の行方
アパートに着いた。
当然ながら尚美はいないから、俺は滅多に使う事のない部屋の鍵を財布から取り出し、それでドアの鍵を開けた。後ろで真琴が不思議そうにする気配を感じながら……
「さあ、入って」
「居ないの?」
「尚美達か?」
「うん……」
「急に用事が出来て実家に帰ってる」
「なんだあ……」
さもがっかり、といった様子の真琴を、俺はそ知らぬ顔で中に招き入れた。真琴を騙してるようで、実際にそうなんだが、後ろめたさもあったが、真琴は“家に行きたい”と言ったのであって、尚美に会いたいとは一言も言ってない。だから俺は悪くない。なんて、心の中で言い訳をしたり……
「狭いのね」
真琴は中に入るなり、そんな憎まれ口を言った。
「そうだけど、おまえの所よりは多少広いぜ?」
そう返すと、真琴は“ふん”って感じで顔を背けた。不機嫌さ全開だ。
「コーヒー淹れるから、その辺に座ってくれ」
6畳間のローテーブルの辺りを顎で指して言ったのだが、真琴は立ったまま辺りをキョロキョロ見渡していた。
「なんか臭うわね。赤ちゃん臭いっていうのかなあ」
「実際に赤ちゃんがいるからな。俺は慣れてるから気づかないが」
「あんたの部屋ってあるの?」
「あるよ。そっちに」
「ふーん」
と言い、真琴は部屋の仕切りの襖を無遠慮に開けた。
「狭っ」
「余計なお世話」
俺は真琴の後ろから手を伸ばし、すぐに襖をピシャっと閉めた。真琴に皮肉を言われるのは癪に障るのと、ベッドをしげしげと見られたくなかったからだ。そこに在るかも知れない俺と尚美が一緒に寝てる痕跡を、真琴に見つけられると面倒だから。
当然ながら尚美はいないから、俺は滅多に使う事のない部屋の鍵を財布から取り出し、それでドアの鍵を開けた。後ろで真琴が不思議そうにする気配を感じながら……
「さあ、入って」
「居ないの?」
「尚美達か?」
「うん……」
「急に用事が出来て実家に帰ってる」
「なんだあ……」
さもがっかり、といった様子の真琴を、俺はそ知らぬ顔で中に招き入れた。真琴を騙してるようで、実際にそうなんだが、後ろめたさもあったが、真琴は“家に行きたい”と言ったのであって、尚美に会いたいとは一言も言ってない。だから俺は悪くない。なんて、心の中で言い訳をしたり……
「狭いのね」
真琴は中に入るなり、そんな憎まれ口を言った。
「そうだけど、おまえの所よりは多少広いぜ?」
そう返すと、真琴は“ふん”って感じで顔を背けた。不機嫌さ全開だ。
「コーヒー淹れるから、その辺に座ってくれ」
6畳間のローテーブルの辺りを顎で指して言ったのだが、真琴は立ったまま辺りをキョロキョロ見渡していた。
「なんか臭うわね。赤ちゃん臭いっていうのかなあ」
「実際に赤ちゃんがいるからな。俺は慣れてるから気づかないが」
「あんたの部屋ってあるの?」
「あるよ。そっちに」
「ふーん」
と言い、真琴は部屋の仕切りの襖を無遠慮に開けた。
「狭っ」
「余計なお世話」
俺は真琴の後ろから手を伸ばし、すぐに襖をピシャっと閉めた。真琴に皮肉を言われるのは癪に障るのと、ベッドをしげしげと見られたくなかったからだ。そこに在るかも知れない俺と尚美が一緒に寝てる痕跡を、真琴に見つけられると面倒だから。