偽装結婚の行方
真琴の部屋に明かりが灯っているのを確認し、俺は呼び鈴を圧した。


「涼!? どうしたの?」

「うん、ちょっとな……。入ってもいいか?」

「もちろんよ」

「わるい。急に押し掛けたりして……。あ、その前に、どこか車を止めるとこないかな? 路駐はヤバイから」

「そうね……。ちょっと待って?」


真琴はいったん引っ込み、少しして戻って来た。


「大家さんに聞いたら、駐車場に1台分の空きがあるから、一時的ならそこに止めていいって」

「そうか?」

「うん、場所を案内するね?」


やけにキビキビした動作で動く真琴の案内で、アパートの前にある駐車場の、一番奥に車を止めた。その時真琴の目は、車の後部座席に無造作に積んだ、俺のボストンバッグをしっかりと見ていたと思う。


「ご飯は食べたの?」

「ん……食ってない」

「そうなんだ? じゃあ何か作るね。ラーメンでいい?」

「いや、いいよ。食欲ないから」


それは本当だった。今もそうだし、朝から食欲がなく、考えてみたら昼もろくに食べてなかった。


「無理してでも食べなきゃダメだって……」

「じゃあ、ほんの少しにしてくれるか?」

「わかった」


今夜の真琴は、やけに行動的で明るく見えるが、俺の気のせいだろうか……

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