偽装結婚の行方
「ちょ、真琴、何してんだよ?」

「困る?」

「え?」

「こうされると、したくなって困る?」

「何言ってんだよ……」

「いいよ、しても」


真琴はそう言い、急に顔が近付いたと思ったら、口と口が合わさった。つまり、キスされてしまった。


「や、やめろって……」


俺はすぐに真琴の頭を両手で挟んで押しやった。


「何なんだよ、急に……。冗談はやめてくれ」

「冗談じゃないもん、本気だもん」


真琴は真っ直ぐ俺を見て、低い声で言った。とてもふざけてるようには見えない。

「あたし、ずっと前から……あんたの事が好きだもん」

「そ、そうか。それを言ったら、俺だって好きだよ。真琴の事……」

「違う! あんたの“好き”は、友達としてでしょ?」

「も、もちろん」

「やっぱりね。でもあたしのは違う。あたしのは、あんたを男として好き、って事なのよ!」

「えっ? 嘘だろ? だってそんな事、今まで一度も……」

「あんたがあたしを女として見てくれないから、言いたくても言えなかったのよ!」

「真琴……」

「あたしだって女なんだからね? あの子みたいに女っぽくはないけど……」

「…………えっ?」

< 87 / 122 >

この作品をシェア

pagetop