NAO

眞木 直也side



真澄が『帰る』と言い出し荷物をまとめて家を出ようとする。


引き止めてしまいそうになるのを必死でおさえる。


―ガチャン……。


強く閉められたドアの音が虚しく部屋に響き渡る。


今なら追い掛ければ間に合うんだろうがここで追いかければ意味がない…。


今はわざと引き離すのが優しさだと俺は思うんだ。


俺が優しくしてしまえば甘えがでてしまう。


だからそれじゃいけないんだ。


気付くのが遅かったのかもしれない。


もう少し俺が早く気付いてやってれば真澄はこんな事にならなかったんじゃないかって…。


結婚しようなんて言ってしまった事は間違いだったんだろうか…。


とにかくやり場のない思いは自分を責める事しかできない…――。






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