NAO


だけどやっぱりあなただけは違うんだ――…。


先生。


「おいっ!長瀬!何ぼーっと歩いてんだ…」


放課後、階段を下りる途中ふいに声をかけられる。


あの出来事以来、先生は変わらず何もなかったかのように話しかけてくれる。


でも私はいつも無言のまま通りすぎ先生は追ってこない。


だから今日も無言のまま立ち去ろうとする…。


「………。」


「長瀬!」


私の足がとまる。


「長瀬、土田と桜庭と何かあったのか?――…ほらッ、最近ずーっと一人でいるから。その、心配だから…。」


“心配だから”


先生の声が優しくて、心に何度も響いてきて涙が溢れだしそうになるのを必死でこらえる。


本当は今すぐ先生の胸に飛び込んで抱きしめてほしい――。


なのに――…。


「何もないです。ただ一緒にいるの疲れただけです。だから自分から離れた。それだけ…。ただそれだけです……。」


長い沈黙のあと…


「本当か?長瀬がそういうなら信じるよ。でもな人間……。一人じゃつらい時何度もあると思うから…」


「わかってる…。でも大丈夫だから、もうほっといて下さい!!」


「ほっとけない!!」


立ち去ろうとする私の右手を強くひっぱられ先生の胸に抱きよせられる――…。

このまま――…。


このまま甘えていればよかったのに。


「長瀬。長瀬ってうるさいよ!!いい加減ほっといて!!」


私は先生の腕をつきはなしその場から逃げた――…。






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