巨人
 茎雄は息を止めた。

 身長は三メートルほどで、顔は日本人の男だ。やはり裸だった。服は着ていないし、噂通りに性器の部分は何もなかった。

 茎雄は止めていた息を吐いた。

 巨人に追いかけられて、逃げ遅れた数人が前に転んで倒れていた。

 転んだ人たちは助けを求めるように手を向けた。

 茎雄は動くこともできずに見ているだけだった。

 巨人の近くに倒れているのは白髪の老女だ。

 茎雄から五メートル先にいるのは中年の男で、四十代前半だろう。

 巨人は老女には目もくれず、中年の男の方に走ってやってきた。

「助けて~」

 と、中年の男は命乞いをした。
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