ボーイズ・ビー・アンビシャス
俺と二戸は、高2のときのクラスが同じだった。
一応進学校であるうちの高校は、2年のときののまま3年になるので、今も同じクラスだ。
クラス替えして間もないころ。
俺は知り合いもそんなにいなかったし、もともと友人を作るのが苦手だったためひとりでぼーっとしていることが多かった。
「なあ」
「なあ、おい」
いきなり肩に触れられて、びくりとした。
イヤフォンを外す。
横を向くと、背の高い男が立っている。
確か、同じクラスの奴だ。
「な、なに…」
「あ、わりい」
顔をくしゃりとさせて笑う。
以前どこかで、見たことがある。
「なあ、いつもそれ聞いてるけど、好きなの?」
それ、と彼が指差したのは俺の使い古したウォークマンだった。
中学生のころから愛用しているので、ところどころ塗装が剥げてしまっている。
しかし無精な性格が出てしまって、最新型に買い直して曲を入れ直すのが面倒でずっと使っている。
お世話にも綺麗とは言えない代物だ。
「あ、これ」
「そ。いっつもなーんもしないでそれ聞いてるじゃん。気になって」
…きらきらしている。
リア充だこいつ。すぐにわかった。
俺は自慢じゃないが根暗だ。
だからこの手の人種は不慣れだ。
見ず知らずの他人にこんなに気さくに話しかけられるなんて、ほんと尊敬する。
俺にはないコミュニケーション能力だ。
「あー俺、音楽好きで…」
「へえー何聞くの?」
「え…たぶん、知らねえよ」
そう言うと、彼はきょとんとした顔をする。