ボーイズ・ビー・アンビシャス
この問いはよくされることがあった。
しかし、例えばそのバンド名を言ったところでかえってくる反応は似たり寄ったりだった。
俺にとっては神様にも値するのに、興味がないやつにとっては「へえー」で終わってしまう。
それを俺はよく知っていた。
また、その件に僻僻としていた。
「うん。俺たぶんわかんね。音楽知らねーもん」
だから、そのあっさりした返答に多少驚いた。
「あ…そう」
「うん。だからさ、教えて」
「……」
圧倒されていると、二戸は「なんだよー秘密にすんなよー」と口を尖らせた。
秘密にしたいわけではないが、少し躊躇う。
誰だって自分の好きなものを紹介するのは少し気恥ずかしい。
そして、もし趣味に合わなかったら、「へえー」で終わってしまったら、と考えると言葉に詰まってしまう。
「い、いや…でも、古いし洋楽だからなに言ってるかわかんないよ?」
「うんうん」
本当に興味があるのかないのか、わからない。
「…聞いてみる?」
「うん!」
試しに問うと、その日一番の笑顔で返された。
聞いてみる?
そう言って聞かせた曲はやはり二戸にはわからないようだった。
それでも俺のお気に入りを問いただしては、イヤホンを分け合って二人で聞いた。
一曲一曲にいちいち感想をつける二戸は俺にはとても新鮮だった。
「なんだこのボーカル」とか「え!なにこれ!なんで叫んでんの!こええ!」とか。
必ずしもいい感想ばかりではなかったが、自分の気に入ってる曲を「これ、俺好きだわ」と言ってくれるのはやはり、うれしかった。