ボーイズ・ビー・アンビシャス
「お前はちゃんとメロディがあるほうが好きなんだろうな。デスボイス入っててもDiying placeとかは聞けるみたいだしな」
「おー俺あれ好きだ。ボーカルかっけえよ」
二戸は俺のウォークマンからそのバンドを選び、再生した。
片方のイヤフォンから流れるけたたましい音楽。
「俺はacid appleとかRAINとかな…まあいいや、エモいのは俺たち趣味合うみたいだし」
「cold sunとかwake up boyとか有名どころな。外人ってなんであんな歌唱力あんのかな。やっぱ声のでかたがちげえよな」
「昨日カラオケ行った時も全然あんな風に歌えなかったしな…もうカラオケなんて行かねえ」
「ああ?俺は好きだけどなーーてか、お前と行ったの始めてだったな」
それもそうだと思って、次の曲を流す。
「あ、俺これすき」
「カラオケなんて、久しぶりに歌ったわ…」
「音楽は好きなのに歌うのは嫌いなん?でも文化祭歌うんだろ?大丈夫かよ」
二戸はからからと笑った。
そう。
そうなのだ。
俺は今度の文化祭で、バンドで歌わなきゃいけなくなった。
なんでもうちのバンドのギタボは舌がまわらなくて洋楽が歌えないらしい。
先週になってそんなことを、言い始めるのだから、困った。
俺たち2年は、最後の文化祭だ。
3年になると受験でそれどころじゃなくなる。
かっこわるい終わり方なんてしたくない。
ギタボの頑なな意見により、急遽ギターだった俺がキタボとして歌うことになった。
最悪だ。
絶望だ。
ただの公開死刑だ。
ただでさえ文化祭で人前に立つのが嫌でしょうがないのに、人前で歌うなんて、死ねる。
「風志の勇姿をカメラにおさめといてやるから、がんばれよ!」
「そんなことして、一生馬鹿にするつもりだろ…」
面白がりやがって。
俺は二戸をぎろりと睨んだ。