ボーイズ・ビー・アンビシャス






キイン・・・




ハウリングがうるさい。


俺は、汗ばんだ手でマイクを握った。






ライブはもう終盤だった。


突如、中央にあるマイクスタンドまで出てきた俺を、客は静かに見守っていた。


きっと、俺のことを初めて見た人間ばかりだろう。


俺の組むバンドのボーカルは、俺が言うのもなんだがイケメンなので最前には女の子も多くいた。


さっきまで歌っていたイケメンボーカルが会場から見て右手のほうに、さっきまで俺がいたところに移動したのを、さぞや不思議に思っただろう。



次は、お前が歌うのか?と。



思わず下を向く。







畜生。


なんで、俺が。



浅く息を吸う。



曲は俺の歌から始まる。


最初はほとんどアカペラだ。



何度も練習して、さっきのリハーサルでもちゃんと歌えた。


しかし、大勢の観客の目が、俺を見ていると思うと



足が、竦んでしまう。






「………っ」



落ち着け、俺。

落ち着け。

落ちつけ。






そう言い聞かせる。



深く息をはいて、前を見据える。


ライトがまぶしくて、目がくらむ。





でも、そんな中に見つけてしまうのだった。


無意識に探していたのかもしれない。


最前列で口をぱくぱくとさせている。





「………あ」




昨日の会話を思い出した。




< 19 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop