ボーイズ・ビー・アンビシャス
キイン・・・
ハウリングがうるさい。
俺は、汗ばんだ手でマイクを握った。
ライブはもう終盤だった。
突如、中央にあるマイクスタンドまで出てきた俺を、客は静かに見守っていた。
きっと、俺のことを初めて見た人間ばかりだろう。
俺の組むバンドのボーカルは、俺が言うのもなんだがイケメンなので最前には女の子も多くいた。
さっきまで歌っていたイケメンボーカルが会場から見て右手のほうに、さっきまで俺がいたところに移動したのを、さぞや不思議に思っただろう。
次は、お前が歌うのか?と。
思わず下を向く。
畜生。
なんで、俺が。
浅く息を吸う。
曲は俺の歌から始まる。
最初はほとんどアカペラだ。
何度も練習して、さっきのリハーサルでもちゃんと歌えた。
しかし、大勢の観客の目が、俺を見ていると思うと
足が、竦んでしまう。
「………っ」
落ち着け、俺。
落ち着け。
落ちつけ。
そう言い聞かせる。
深く息をはいて、前を見据える。
ライトがまぶしくて、目がくらむ。
でも、そんな中に見つけてしまうのだった。
無意識に探していたのかもしれない。
最前列で口をぱくぱくとさせている。
「………あ」
昨日の会話を思い出した。