ボーイズ・ビー・アンビシャス
その日のライブは大成功。
後に聞くと、とても好評だったという。
もちろんイケメンボーカルは女子達に大絶賛されていた。
うちのバンドの知名度も上がるわけだ。
そして、一曲だけ洋楽を歌った俺の名前もしばしば囁かれたらしい。
文化祭のあとにそんなことを聞いた。
でも正直、どうでもよかった。
それどころじゃない。
二戸への想いになんて、気づきたくなかった。
一生叶わない、俺の恋。
しかも、初恋だ。
笑ってしまう。
なんて、不毛。
ステージを降りると、二戸が待っていた。
俺の姿を見つけるなり駆け寄ってきて、勢いよく抱きつかれた。
ごつごつとした二戸の体は、汗ばんで火照っていた。
「最高だった。お前が俺の神様になったぞ!」
がらにもなく、そんな言葉を掛けられて泣いてしまった。
バンドのメンバーや周りの人に変な顔をされたが、止まらなかった。
「もー風志くんは泣き虫なんだから」
二戸はいつものようにからからと笑い、俺の涙を拭った。
17歳。
初めて恋をした。
それも一生、叶わない。
「うるせー見んな」
ああ、もう。
声が、震えてしまっていた。