ボーイズ・ビー・アンビシャス
「え、いいの」
「おう。あけてみろ」
まわりの連中がにやにやしながらこちらを覗き込んでくる。
白い紙袋からは、ぽとりと赤いお守りが出て来た。
「…お前これ、安産祈願じゃねえか……」
言ったとたんにサンタ姿の奴らが全員笑い転げた。
「てめえら俺になにを生ませたいんだ…?」
「いやっ…!!そうじゃ、なくて」
腹を抱えてひいひい笑っている二戸が弁解する。
涙目になっていやがる。
バカにしやがって。
「俺が知っている中で、お前がいちばん無理めな挑戦をしている」
「は?」
失礼な。
こないだの模試ではやっとC判定が出たというのに。
…無理めか。
「俺たち、何人かの家行ってお守りをプレゼントしてきたんだ。でもそのなかでもお前がいちばん難関校を狙っててな」
「お前ら、その格好でこのへんうろうろしてたのか…」
あきれて言うと、あったかいんだぞ!と膝蹴りをくらった。
だからといっても、まぬけすぎる。
「まあ、お前なら受かると思うけどな。念には念だ。とにかくいちばん強力そうなの選んでやったんだ!」
強力そうなので、安産ってどーいう頭してやがる。
まさか自分の友人がここまであほだとは…狙ってやっているのだから、救いようがない。
「ほんと…お前らって馬鹿だよな!!」
「褒め言葉だぜ?それ」
からからと笑う二戸を見て、心の中で舌打ちをした。
お守りは、いい。
素直にうれしい。
でも、安産って。
安産ってなんだよ!!
人の気も知らないで…
ちょっとシャレになんねえじゃないか。
とは、さすがにつっこめなかったが。
すこししてサンタたちは帰っていった。
あのなかの誰かの家に泊まりにいくらしい。
だとしたらその家は大迷惑だろう。