ボーイズ・ビー・アンビシャス



「総理大臣になれば、金も権力も手に入る。

俺は、それが欲しい。

しかし結局それは自分のためだ。


総理大臣になる、という志はそういう信念や決意としての"志"だ。」




二戸は俺のプリントに志、と書いた。

見かけによらずまっすぐで綺麗な字をしている。





「博士の言った志ってのは、これとは、違う。

と、俺は思ってる。」

「お前が、か」

「おう。いいから聞けよ。

じゃあ、俺が日本国民みんなを幸せにしたいと思って、総理大臣になろうとする。


これも"志"だ。


しかしさっきのとは全く違うな?

なんでかわかる?」


「さすがに。国民のためだからだろ?」


「そ。今度は自分のためではない。
誰かのために、総理大臣になりたいからだ。

それも、"志"

知らなかったろ?
志っていう言葉には、相手のことを思いやるっていう意味もあるんだ」


「へえ…それは、知らなかった」


「博士が言いたかったのは、

人間として、自分のためだけでなく他の人のためにも尽くせるような人間になりなさい。

こういうこと。」

「…なーるほど」





少年よ、大志を抱け。



それだけなら、なんとも投げやりな名言だろうか。

でも、あとにそう続くのならば、重みが違う。





相手のこと、思いやる。
そういった志を抱きなさい。




なかなか教育者らしい言葉だ。



「まあ、これも諸説あるんだけどねえ。国語の苦手な風志くんにもわかってもらえてよかった」

「お前、国語とかはできるのな。数学はだめなくせに」



二戸は現国とか、そういうのは勉強しなくてもできる。

俺とは正反対だ。

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