偽りの愛は深緑に染まる
ブランド服としっかりめの化粧、巻いた髪ーー眼鏡でほぼノーメイク、後ろで一つに束ねているだけという会社での格好とは正反対の今の自分。
どう思うだろうか。普段は地味で金も無さそうな同僚が、週末に派手な格好をして出歩いていたら。
佐渡山が鈍い男なら、ギャップすごいなあ、とかで終わりかもしれない。
しかしまたまた勝手なイメージだが、おそらく彼は隙のないタイプだ。頭の回転が速く、人の秘密を推理してほくそ笑む、蛇みたいな……。
梨沙は耐えられなくなり、車両を変わろうとした。しかし思い止まる。下手に動くより、知らんぷりしてじっとしておくのがいい。