偽りの愛は深緑に染まる

 それからの4駅は長かった。佐渡山降りろ、降りろと祈りながら過ごした。

 いつもの駅に着き、電車を降りる。これでやっと佐渡山から離れられる。はあーっと長い息をついて改札へ向かった。



* * *


 次の日、佐渡山のこともすっかり忘れて会社へ行った。また一週間が始まる、と少し気が重いが、コンビニで新発売のクッキーを買って行ったので機嫌はまあまあだ。

 佐渡山とは席が近いので、仕事中ときどき昨日のことを思い出した。意識はしていたものの、気にするまいと努めた。

 夕方になり、梨沙は休憩に出た。廊下の突き当たりにある大きめの窓に肘をついて、ぼーっと外を眺める。

 
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