偽りの愛は深緑に染まる
「いや……なに言ってるのかわからないんだけど」
心拍数が上がる。嘘だ、どうしてあれだけでばれた? 毎週? いつから気付かれてたの?
「とぼけるのとか面倒臭いからやめろ」
ぎくっとする。上から見下ろされる威圧感に加え、佐渡山の声色は逆らえないものがあった。
「あんたが毎週あの男と別れてから使ってる駅、俺のアパートのすぐそばなんだよ。一ヶ月くらい前に見かけた。ホテルから出てくるとこ。面白そうだっから尾けてみることにした、それだけ」
「それだけ……って」
エレベーターは1階に着いた。
扉が開いて佐渡山が出て行く。梨沙も出なければいけないが足が動かない。
「ちょっと付き合って」
「わっ……ちょっ、離して!!」