偽りの愛は深緑に染まる
最低、最低だ。こんな奴のために、時間を取られて雑用してるなんて。
「もう帰る!」
と、言いたかった。
しかし佐渡山には弱みを握られている。社内で噂の的になるのは嫌だ。しかも内容が内容、そして否定しようもない事実。
「……本当にやめてよ、さっきみたいなことは。大人しく用事片付けてるから。文句ないでしょ」
「ま、いいよ。俺の想像が当たってたことはわかったから。お前わかりやすいなー」
……こいつ。
「気が散るから黙ってて!」
昨日までは想像もできなかった。
女子社員の人気を独占する佐渡山に怒鳴りながら、脅されて仕方なく命令をきくなんて。
しかし、これはまだまだほんの始まりにすぎないことを、梨沙はこれから思い知ることになる。