偽りの愛は深緑に染まる
酒飲み
懸賞応募の葉書を三十枚以上書いたその3日後、梨沙は再び佐渡山に呼び出された。
「……一体何の用ですか」
覚悟して佐渡山に訊く。
冗談だと言ってはいたが、この間は襲われそうになったのだ。もし今日も佐渡山のアパートで雑用ということなら、場所は変えてもらう。
「飲みに行くから付き合ってよ」
「は?」
予想外の言葉にぽかんとする。
飲みに行く? それは、どう考えても雑用ではないではないか。
佐渡山とは友達ではないし、そう思われたくもない。向こうも同じなはずだ。
「どうして。私とあなたは仲良くも何ともないはずだけど」
まさか、酔わせて何かしようと思っているのだろうか。それは少し自意識過剰だろうか。いや、この男のことだから注意しておくに越したことはない。
しかし、梨沙は酒にはめっぽう強い。ちょっとやそっとでは酔わないから、もし佐渡山がそういうことを企んでいたとしても、心配は薄いのだが。
「どこ行く?」
「人の話を聞いて下さい。」