偽りの愛は深緑に染まる
まったく、どういう育ち方をしたらこんな性格になるのだろうか。
どこでもどうぞお好きに、と答えて、連れて行かれたのは会社から徒歩5分程度の居酒屋だった。
「……あの、一昨日の葉書地獄から、どうやったらこうなるのかわからないんだけど」
佐渡山は料理を注文していた。梨沙は状況がうまく飲み込めずメニューもろくに見ていない。
「だって、うちの会社すぐ酔う奴らばっかりだろ」
「まあ、そうだけど」
「でもお前はいつも結構飲んでるのに全然潰れん。素面のままだ。そういう奴なら気兼ねせずに思う存分飲めるだろ」
つまり、梨沙は酒を飲む都合のいい相手役というわけだ。
「ふーん、あなたが他人に気を遣うなんて雪でも降りそうですね」
「崇でいいから。他人行儀すぎだろ」
「脅されてるのにそんな親しげに呼べないから!」