偽りの愛は深緑に染まる
「いや全然楽しくない。喋ることもないし。というか共通の話題もないだろ」
「うっ……」
確かにその通りだが、ズバズバ言い過ぎではないか。
「そーですよね……だからさ、なんで? 会社の人じゃなくても、大学時代の友達とかと飲めばいいんじゃない?」
「あいつらは忙しそうだから。お前は暇そうな匂いがぷんぷんするけどな。ごちゃごちゃ言うなよ、面倒臭え。俺の行動に特に理由は無いんだよ」
佐渡山はそう言うと、ジョッキを傾けてぐいっと飲んだ。若干顔色が赤くなっている。どうやら梨沙ほど酒に強いわけではないらしい。
「私、9時から観たい番組あるから、もうそろそろ帰らない?」
「あ? まだ飲めるだろ」
「佐渡山。顔赤いよ。私の方がお酒強いみたいだね」
時計を見ると8時20分。そろそろ帰らないと間に合わない。ああ、時間を浪費してしまった。
「じゃ、帰る。まだいるの?」
「もうお前となんか2度と飲まねーからな。早く帰れ帰れ……」
「それはよかった」
梨沙は会計して、居酒屋を出た。