その結婚、取扱い注意!
「だって、それって女の人の口紅でしょ?」
「確かにそれだけど、浮気じゃない」
「じゃあどうしてなのっ!?」

そう問い詰める私の目頭が熱くなって瞳が潤んでくるのを感じた。

「いつも残業してくれる部下をねぎらって美里んとこに連れて行ったんだよ。そいつ、おかま好きでさ。明菜に抱きつかれたから、その時付いたんだろ」

美人堂へ……? ばれる嘘は絶対につかないはずだから、湊は本当のことを言ってるの?

「くそっ、明菜にワイシャツ代請求してやる」

湊はワイシャツを乱暴に脱いでいる。

「本当……?」

心では信じているけれど口ではそう聞いてしまう。すると、湊は仕方ないなというような笑みを浮かべて腰に腕を回してくる。

「本当。美人堂へ確かめても良いよ。俺はお前一筋なんだから、やましいことなんて一つもない」

湊……。

「……信じるから、美人堂へも聞かないよ」

聞いたら湊を裏切ることになってしまう。

「いいのか? 美里に確認しても良いんだぞ?」

湊が額を合わせてくる。

「大丈夫だよ。湊を信じてる。びっくりしたけどね」
「お前ってほんといい女」
「それって真面目に言ってる?」
「もちろん」

湊はふっと微笑むと、食むように唇を合わせて何度もキスした後離れる。

「シャンプーの香りに欲情した。風呂入ってくる」

湊は私の頬を撫でるように触れてから、バスルームに消えて行った。

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