その結婚、取扱い注意!
「まあね。俺たち幼なじみなんだ」
「幼なじみ……」

私と湊の関係と同じ。違うのはひとりが元男の子だったってこと。

「俺さ、男……いや、おネエのあいつとしかキスしたことないんだ」

いきなり何を言うの……? それに一応アイドルグループにいるような人がひとりとしかキスしたことがないなんて信じられないし。

私はその言葉を無視するようにテーブルの上のシャンパングラスに手を伸ばす。

「ね、キスさせてくんない?」

はあ?

驚いて彼を見た途端、口に含んだシャンパンが喉に勢いよく流れ込み、激しくむせるはめに。

「ごほっ、ごほっ……んんっ!」
「本当に人妻? それくらいで慌てるなんて可愛いな」

彼の手が私の背中を軽く叩く。彼は無意識に私に触れたのかもしれないけれど、それにもびっくりして飛び跳ねるように立ち上がる。

「からかわないでよ」

彼を一喝してから、頼りになる美里ママを探す。

部屋にいれば大柄な美里ママはすぐわかるのに見つからない。と言うことは秘密の園、バックヤードにいるのかも。

「からかってなんていないよ」

美里ママを探す私の手首は掴まれぐっと引っ張られる。私は尻もちをつくように元の席に座らされていた。



< 13 / 155 >

この作品をシェア

pagetop