その結婚、取扱い注意!
私がこの町へ引っ越ししたのは10才の頃。

湊は生まれた頃からこの町に住んでいる。

湊の5歳はきっと可愛かったんだろうな。

中学1年生くらいまではファニーフェースで女の子に間違われていたし。

隣の湊を見ると、お父さんにお酒を勧められて飲み始めている。

熱燗、美味しそう。

外で体が冷えてしまったから、熱いものが飲みたい。

「お父さん、私も」

目の前のおちょこを持って、父に注いでもらおうと差し出すと、湊がそれを奪う。

「食べすぎで気持ち悪いんだろ」
「もう大丈夫だよ」
「本当に?」
「本当よ。外が寒かったから早く暖かいのが飲みたいの」

湊からおちょこを取り上げて、父に注いでもらう。

「それなら一杯だけだぞ」

そう言いながら日本酒が注がれ、おちょこが温まる。

「子供じゃないんですけど」

ムッとしながら父に言うと、本田の義父が笑いながら言う。

「美海ちゃん、食べながら飲みなさい」
「はい。お義父さん」

そんな私を湊は半ば呆れたように見ていた。

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