その結婚、取扱い注意!
その夜、おせち料理、たらばがになど、豪勢な料理が安西家のテーブルに並んだ。

「美海、こっちでお肉焼いてから持っていくから、用意お願い」

1時間ほど寝て胃の不調も良くなったはずだったけれど、すきやきの用意を頼まれて、鍋に牛脂を入れ牛肉を焼こうとした時、胃からせり上がってくる吐き気に、思わず「ウッ」っと声を出してしまう。

「どうしたの?」

お皿を出していたお母さんにも聞こえたようで私に近づいてくる。

「吐き気が……うっ」

こみ上げる吐き気に、口元を手で押さえて、洗面所に駆け込む。

口をゆすぎ、むかむかする吐き気に、胃を押さえているとお母さんが冷たいタオルを持ってやってきた。

「妊娠間違いなしね。おめでとう」
「やっぱりそうなのかな?」
「絶対そうよ。お正月休みが明けたら、産婦人科に行きなさいね」
「え? お母さんは行ってくれないの?」
「美海には湊くんがいるでしょ。絶対に一緒に行くって言うわよ」

ふふっと笑いながら、キッチンへ戻っていくお母さん。

「あら、湊くん。美海が心配なのねぇ」

廊下で湊とばったり会ったみたいで、お母さんの陽気な声がする。

スリッパの足音が聞こえ、湊が洗面所を覗いた。

「大丈夫か?」
「うん。すき焼きのお肉焼こうとしたら吐き気がしてきて」
「明日、開いている病院調べて行こうな」

お母さんの読みは当たっていて、湊は付いてきてくれるようだ。

「うん」

私は微笑みを浮かべて頷いた。

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