その結婚、取扱い注意!
まだ始まっていなかったようで、私のグラスに菊池さんがビールを注いでくれると、すぐに乾杯となった。

「安、いや本田さんだったな。酔わないうちに話しをしたいんだが」
「お話ですか?」

田代部長が私に何の話しがあるのだろう?

「4月半ばに高校生の250名の修学旅行があってね」
「わっ、それはすごいですね」

さすが田代部長。

「そこでなんだが、短期間のアルバイトをしてみないか? もちろん、短期間でなくとも本田さんなら歓迎だが。行先はロンドン・パリ。君ならよく知っているから資料作成もできるだろう」

家で暇を持て余している私にはとても魅力的な話。
湊は賛成してくれるかな……?

「やりがいのある仕事ですね。しゅ、主人に聞いてお返事でいいですか?」

湊を主人と呼ぶのは恥ずかしくて、どもってしまう。

そんな私に田代部長が目尻を下げて笑う。少し目尻に入った皺が笑いの中にも渋さを感じさせる。

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