その結婚、取扱い注意!
「ね、美海。また一緒に働けるのは嬉しいけれど、子供は作らないの?」

ふいに菊池さんに子供と言われて、赤ちゃんが出来ていなかった辛い気持ちがよみがえり、胸がズキンと痛んだ。

「……ん……今のところは……」

言葉を濁すと、手元のライムサワーの入ったグラスを口にする。

「さては、夫婦仲が良すぎて、まだいらないのかな?」
「えっ!? な、なにを言って――」
「隠そうとしているみたいだけど、さっきからキスマークが見えてるのよね」

菊池さんは自分の首を指さして楽しそうに笑う。

昨晩、湊につけられた痕のことを思い出して、慌ててスカーフに手をやる。

「もうっ、真っ赤になっちゃって」

酔っているのか、菊池さんはあたしの肩をバシッと叩く。

「からかわないでよ」

私はバッグから小さな鏡を取り出し、周りにわからないようにスカーフを直す。

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