その結婚、取扱い注意!
「で、新年会は楽しかったのか?」
「あ、うん。楽しかったよ。あのね? 湊、相談があるんだけれど」

私は髪をタオルで拭きながら、湊の前にちょこんと座る。

「あらたまって、なに?」
「少しの間、アルバイトしていい? 4月に高校生のロンドン・パリの修学旅行があって、手続きや資料作成に人が足りないんだって。そのことで新年会に呼ばれたの」
「ミミが大変じゃなかったらいいよ。専業主婦も楽じゃないからな」

ロンドンにいた頃、ミミは学校の友人たちと帰りにどこかへ寄ることもあったが、こちらでは友人は皆仕事をしているので、つい出不精になっていた。

「ありがとう。家事もおろそかにしないからね」

私がそう言うと、湊はふぅっと表情を和らげて首を横に振る。

「そう言う意味じゃないんだ。仕事をするんだからストレス、溜まるだろう? 家事も手を抜かないだろうし。それだとミミが大変だから、仕事は手抜きできないとして、家事は手抜きしろってこと。俺も出来るだけ手伝うから」
「湊っ!」

私は嬉しくて湊に抱きついた。私を抱きとめた湊は片手を床について身体を支えている。

「湊って、すごく良い旦那様だよね。私、幸せだよ」
「今頃わかったのか?」
「ううん! ずっと、ずっと思っていたから」

私は湊の肩から顔を上げてにっこり笑う。

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