その結婚、取扱い注意!
少ししてやって来た担当者は教頭先生。メガネをかけた年配の男性で、良いお父さんといった印象。

田代部長は私を教頭先生に紹介する。
当たり障りない談話の後、教頭先生はまずそろった50名分の書類を私に預けた。

それから田代部長はロンドンとパリの大まかな観光場所を説明していく。去年までの修学旅行はニュージーランドで、ヨーロッパに疎い教頭先生は真剣に田代部長の説明を聞いている。

打ち合わせは約1時間で終わり、私たちは渋谷支店へ戻った。
戻ると、12時近くになっていた。

「本田君、書類を金庫に入れたらランチに行ってきていいぞ」
「はい」

緊張していたせいか、体力消耗でお腹が鳴りそうなほど空いている。

金庫に書類を入れて部屋を出ると、向こうから久我さんと菊池さんがやって来る。
私を見た2人は同時に口元を歪ませて噴き出す。

「はいはい。私が就活中に見えるんでしょう?」

開き直って首を横に振ると、以前とは違う長い髪がふんわりと頬を打つ。

「自覚してるんだ?」
「田代部長に言われたの」
「あ……」

久我さんは突然照れたように黙る。

「あ?」

久我さんの視線を追うと、田代部長がこちらへ向かってくるところだった。

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