その結婚、取扱い注意!

辛い選択

今日の仕事もパスポート申請書類作成。
集中して仕事に没頭している。

企画営業課のみんなは田代部長を除いて出掛けている。
田代部長も忙しく部屋を出たり入ったり。今は席を外している。

背後に誰かが立ったのも気づかずにいると――

「本田さん」

女性の声にハッと振り返ると、本社予約課の松下さつきさんだった。
彼女は大学の時、湊と付き合っていた人で、私と湊が付き合っている時はよく思われず、意地悪をされた。
けれど、私が退職する時に、和解というか仲直りしている。

「松下さんっ!」

私はイスから立ち上がって、松下さんを見ると目を丸くしてしまう。
松下さんは長かった髪が、顎までのボブになっている。
きれいな松下さんは更に色気のある女性になっていた。

「久しぶりね。なにをそんなに驚いているの?」
「お久しぶりです。髪が短くなっていたので……」
「ああ、これね」

松下さんは頬の辺りの髪をつまみ離す。

「半年前だったかしら、思い切って切ってみたの」
「よく似合っています。変わっていたので、一瞬わかりませんでした」
「あなたは全く変わらないわね」

からかっているのか、そう言って顔をほころばせる。
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