その結婚、取扱い注意!
新宿駅の近辺で、たい焼きの差し入れを買って、美人堂へ向かう。
たい焼き屋さんに寄ってきたせいで、いつもの道と一本違う道を歩いている。
薄暗いしちょっと不安になって歩いていると、以前湊が車を停めていた駐車場を見つけてホッとする。

「タカ! そんなこと言わないで!」

聞こえてきた少し掠れた声。
聞き覚えのある声に足が止まってしまう。

駐車場の隅に立つふたりは、きららさんとタカと呼ばれた先日のアイドルだった。
きららさんは引きとめようとしているみたいに、彼の袖を掴んでいる。

「離せよ! 付き合うなら普通の女と付き合いたいんだよ」

ふたりの別れ話なんて聞きたくなかったけれど、そこを通らないと美人堂へ行けない。
困っていると、タカが不意に私の方へ顔を向けた。

「ぁ……」

目と目が合ってしまい、思わず頭を下げる。
きららさんも私が立っているのがわかると、手をそっと顔にやり、涙を拭いている。

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