シニガミチェーンメール



「…本当にそう書いてあるの?」



誰かが恐れたような声をあげた。



「…本当に書いてある」



暁美は無表情のまま呟き、



玲二に携帯を返した。



「十分以内に誰かに送らないと、
殺されるよ」



「ふざけんな。送らねえよ」



玲二は鋭く暁美を睨みつけ、



クラスの全員を眺めていった。



「この中に誰か、俺にこのメールを
送った奴が居るんじゃねえか?
名乗り出ろよ」



誰も動かない。



玲二はイライラとしたように、



机をドンッと叩いて立ち上がった。



「ふざけんな。今はまだ朝の時間、
休み時間だ。俺は屋上に居るからな」



「ちょっと、井上、送らないと__」



暁美が玲二を止めようとすると、



「お前じゃねえのか?
このメール送った奴。
いい加減にしろよ」



玲二が暁美を突き飛ばした。



暁美の小柄な体が吹っ飛び、



綾介の机に当たった。



「つっ…」



「ちょ、委員長、大丈夫かよ」



綾介が暁美の体を支え、



玲二を見つめる。



玲二は無言のまま、



扉に近づいて、出て行った。



それが合図となったように



ワッと声やらが広がって



暁美の周りに女子が集まったり、



男子は仲の良い友達同士で話し合う。



「…なぁ」



久琉斗が綾介の肩を軽く叩く。



綾介は椅子に座ったまま、



体を久琉斗の方に向けた。



久琉斗は、綾介の後ろの席だ。



「なんだよ」



暁美に集まっていた女子は移動し、



綾介の机から離れていた。



「玲二、大丈夫かな」



「大丈夫だろ。偽物だって」



「だよな」



全員がチラチラと時計を見る。



あれから、七分十三秒が経った。



「綾介」



「なに?」



「屋上に行こうぜ?」



「なんでまた」



久琉斗は顔を強張らせて、



綾介の黒い瞳をいつにない



真剣な表情で見つめた。



「玲二が心配じゃねえか」



「…まぁ」



「せめて、近くに居ようぜ?
それで死ななきゃ、
死神じゃないって事だろ?」



「…ん、まぁ、そういう事になるな」



「な?」



久琉斗が綾介の手首を掴んで



ドアまで引きずる。



「早くしようぜ。なんか心配だ」



「まぁ…確かに嫌な予感はするけど」



久琉斗が綾介の手を放す。



「早く」



二人は屋上に続く階段を駆け上がる。



__八分五十一秒。



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