シニガミチェーンメール
「はるか…?」
叶がヨタヨタと
遥が居た場所に近寄り、
地面に手をついた。
蒼く染まっていく皆子と叶の顔色。
「…はるか…」
皆子が、席から立ち上がった。
「…私たち二人を助けるために…
二人に送ったの…?」
皆子が呟く。
皆子と叶の瞳から溢れる涙は、
茶色い木の床に、
ポタ、ポタ、
と小さな小さな水たまりを
幾つも作っていく。
「はる、かぁ…」
遥と皆子と叶は親友で、
いつでも一緒で、
そんじょそこらとは
比べものにならないほどの、
絆で繋がっていた。
いつでも、一緒。
皆子が叶に近づいていく。
綾介は黙ったままで、
二人を見ていた。
皆子が叶の耳に何かを囁き、
叶がコクンと頷いている。
「…っ、お前ら、なにする気だ」
綾介がガタッと立ち上がり、
警戒するように
ゆっくりと二人に歩み寄っていった。
「…私たちは、遥と一緒に居る…」
皆子がそう言って、
叶と手を繋いだ。
「おい__なにをする気…」
「シニガミチェーンメールから…
私たち…辞退するね…」
叶が呟き、
皆子と共に窓に向かって歩みを進めた。
真奈美と悠と裕理は
それをジッと見ているのみ。
「おい!やめ…」
綾介が駆けるが、
間に合わなかった。
二人は
手を繋いだまま
窓から
飛び降りた。
__ドシャッ__
♫ピロロロロン♫
四人にメールが届く__
「…モルテと見なされたって…
ふざけてんのかよ…」
消えていく命。
一年二組の生徒数__四人。
綾介が机を思い切り蹴り飛ばす。
__ガッシャァァアアン!!!
机は横向きに倒れ、
他の三人が綾介の方を
怯え切った目で見つめる。
机の中からは、
入学式の時に撮った、
一年二組の集合写真。
元の担任、林川が生徒に、
机にいれておけと言った物だ。
写真の中のクラスメイト達__
玲二や暁美や信友や裕美子__
久琉斗や遥、叶、皆子は
屈託ない笑顔で笑い、
ピースマークを作っていた。
あの頃の一年二組は
もうどこにもないのだ。
あるのは傷つき、
ボロボロになり、
誰も信用できなくなった四人の居る、
別の一年二組。
綾介は無言のまま机を立て直すと、
椅子に突っ伏した。
担任が入ってくる。