シニガミチェーンメール
「…は?」
綾介は携帯を思い切り
ベッドの上に投げつけると、
階段を駆け下り
玄関の扉を開け、
外に出た。
どこか、一人になれるところは?
恐怖と_____憤りだけが、
綾介を支配していた。
なんなんだよ!?
何が楽しいだよ!?
ふざけんな!!
どれだけ、
俺を苦しませておいて、
どれだけ友達を狂わせておいて!!
ふざけんな!!
ふざけんな!!
暗闇の街は、
どこまでも続いて行く。
走るのが疲れて、
綾介はゆっくりと足を止めた。
_____悔し涙が、
溢れて止まらない。
「ふざけんなよ…!
畜生がぁ…っ」
小さな公園が見えて、
綾介の足は自然に
そこへと吸い寄せられて行った。
月の光が照らす街。
違和感を感じたものの、
それでも、
その違和感には気づかない。
綾介は、
はあはあと荒ぶる息を整えた。
十八日前にも見た満月を
公園の茶色いベンチに座り
揺れる瞳で
綾介は見つめた。
「…なんで、
シニガミチェーンメールなんて…
始まったんだよ…
みんな、みんな…消えた_____」
周りに人影は、一つもない。
満月だけに聞こえるように、
綾介は独り言を囁いて行く。
「久琉斗が消えた…未来も消えた…
赤崎も消えた…玲二も委員長も…
久留島も…黒川も…
他にも…たくさん…消えた。
俺はいつ消える?今日か?
明日?それとも、生き残んのか…?」
怖い。
怖い…怖い…怖い…怖い…怖い…怖い…
シニガミが、憎い。
たくさんの大切な人や、
クラスメイトを奪ったシニガミが、
憎くてたまらない。
「久琉斗を…未来を…返せよシニガミ…
赤崎を、返せよ…!」
ギュッと歯を噛みしめる。
月は真っ白な光を発し、
空にはまたたく星が
煌々と輝いていた。
「俺も…久琉斗みてえに…
自殺しよっかなー…」
周りを見回すと、
あったのは、
折れた固そうな木の枝だった。
先が尖っている。
あれを…
喉にでも…
突き刺せば…
綾介は立ち上がり、
木の枝を拾うと_____
自分の喉元に突きつけた。
綾介の喉仏が、震える。
ギュッと、目をつぶる。
_____数秒後、
綾介の喉から漏れたのは、
嗚咽だった。
「うっ…うう…ああっ…
うぁああああ…あ…!」
突き刺せなかった。
無様に、
生に、しがみついて。
膝をつくと、
ポタポタと、乾いた地面に
涙のあとをつけて行く。
俺は…消えたく…ない…
…生きたい…
木の棒をポトリと地面に落とすと、
綾介は袖で目をこすった。
肌寒い秋の夜。
綾介は家へ帰ると、
シャワーで汗を流して、
ベッドに沈んだ。