シニガミチェーンメール



不気味な静寂。



綾介以外に人がいないかのような、



静まり返る世界は



無音。



綾介が椅子から立ち上がった。



「うぐっ!うわぁぁぁぁ!!
っ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!
カハッ…はぁっ!はぁっ!」



椅子から



立ち上がった瞬間に、



綾介はドッと、床に倒れ、



過呼吸に陥った。



肩を震わせる。



息が、できない。



「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」





♫ピロロロロン♫




綾介の携帯が鳴るが、



綾介は一向に気づかない。



画面には、



『シニガミチェーンメールガ
終ワッタノデ、呪イガ消エマシタ』



の文字。



クラスメイトが消えたことから、



綾介を守っていた呪いが、



今、解けた。



頭痛が



綾介の頭を



割ろうとしている。



久琉斗っ…未来っ…玲二っ…



ごめん!ごめん!ごめん!



幻影が現れ、綾介を責めた。



滝の真下にいるように苦しい、



痛い。



二十七人の幻影が綾介を囲む。



「なんで僕を選ばなかったんだよ!
僕は生きたかったのに!」



未来が綾介の首を占める。



「お前最低だよ!
なんで止めてくれなかったんだよ!
俺は消えたくなかった!」



久琉斗が綾介の腹を包丁でえぐる。



「お前だって
最初は信じてなかったのに!
なんで俺が消えたんだよ!
お前が消えれば良かったってのに!」



玲二の硬い拳が



何度も何度も顔に食い込む。



罪悪感や悲しみや



自分の身勝手さが



綾介を波のように襲う。



「うわぁぁ!ごめん!ごめん!
ごめんなさい!ごめんなさいぃ!!」



耳を塞いでも、



聞こえてくる幻聴。



床でもがく綾介が、



シニガミには



酷く滑稽に見えるのだろうか。



「お前が消えれば!」



「あんたが消えれば
私は消えずにすんだのよ!」



「ごめんなさい!!ごめ…」



二十七人の幻影が消えて、



倒れこむ綾介の前に、



一人の女子が立つ。



「赤崎っ…ごめん!」



「なんで最期に告白なんてしたの!?
私はシニガミに連れていかれてから、
ずっとその告白で苦しんだのよ!
神楽なんか…消えて!」



綾介の心は、



幻影が叫ぶ言葉で、



ボロボロの布切れのようだ。



「ごめん久琉斗!ごめん未来!
ごめん、皆!ごめん赤崎ぃっ!!」



どす黒いシニガミの狂気が、



綾介を襲う。



「うわぁぁぁあ!ごめんなさい!!!
ごめんなさい!!ごめんなさい!!!
シニガミ!お前はなんのために
シニガミチェーンメールなんて
回したんだよ!目的を教えろよぉ!」





♫ピロロロロン♫
♫ピロロロロン♫





綾介の携帯が激しく音をたてる。



綾介は



トンカチで殴られたように



痛む頭を押さえながら



とめどなく溢れて



床を汚す涙を止めることなく、



メール着信画面を開く。



< 163 / 170 >

この作品をシェア

pagetop