シニガミチェーンメール
ポカンと、突っ立っていた。
「え…れい…じ…?」
久琉斗が、声にならない声を漏らし、
玲二がいた場所を、
ジッと見つめる。
…何もない。
「…井上?」
綾介が周りをキョロキョロと見回す。
…誰も、居ない。
存在はおろか、玲二の身につけていた
制服、ピアス。
タバコから立ち上っていた、紫煙。
玲二の、かげ。
そのすべてが消えている。
ふわりと気持ちのいい秋風が
屋上に吹き渡った。
空はポスターカラーを
塗りたくったかのように
どこまでも青い。
普段と変わらぬ景色。
綾介と久琉斗、二人が
玲二の立っていたはずの
なにもない虚空を見つめ、
呆然と目を見合わせていた、
その瞬間。
♫ピロロロロン♫
二人の携帯が、メールの着信音を、
軽やかに奏でた。