シニガミチェーンメール
「…行ってくる」
「行ってらっしゃい。今日は早いのね」
母の声を無視して、
綾介は憂鬱な気分で家を出た。
自転車ではなく、歩いて駅に向かう。
さー…
明るく、涼しげな風が
綾介の髪を揺らす。
昨日の事は夢だとでもいうように、
静かで平和な町並みだ。
複雑な思いを持ったまま、
駅舎の中に入り、改札口を目指す。
そこには、
いつものように
活気溢れた久琉斗は居ず、
魂を取られたような姿で、
久琉斗は佇んでいた。
「…おはよ」
「…おはよう」
綾介が声をかけても、
返事をするだけだ。
綾介は、さらに学校に行くのが
嫌になってきた。
「行こうぜ…」
「…あぁ…そうだな」
ガタン___ゴトン___
呑気に揺れる田舎町の電車。
度々、景色に黄金色の田んぼが映る。
「おい、元気だせよ」
綾介が苦々しい表情でそう言うと、
久琉斗は顔をこっちに向けた。
「悲しくね〜のかよ?」
「悲しいに決まってる。
あいつ、ガラは悪いけど…
いい奴だもんな」
綾介は、
自分が現在型の返事をしたのに、
気づいていない。
久琉斗が窓に目をやる。
「俺とは親友みたいな間柄だよ」
電車が、二人が降りる駅に着いた。
綾介と久琉斗は、
藍色の生徒鞄を持って、
無言のままで、
教室に向かった。